納税管理人を定めたら「納税地」に注意
日本に住所がない「非居住者」の確定申告で登場するのが「納税管理人」。
非居住者の所得のうち、国内で発生した所得(国内源泉所得)の所得税を本人の代わりに払ってくれる人ですね。

この「納税管理人」を海外転出前に定めておけば、国内で発生した所得の所得税をこれまで通り払えます。
さて、この「納税管理人」で間違えやすいのが、
納税管理人を置いた場合の「納税地」です。
納税管理人はどの税務署に確定申告書類を提出すればいいのでしょうか?

一見、納税管理人が住んでいる地域を所轄する税務署に出せば良い気がしますよね。
しかし、現実はこうです。
納税管理人が住んでいる場所は一切関係ありません。
次の順番で納税地を判断していくのです(国税庁のQAページより)。
申告及び納税等の手続は、これらを行う際における納税者本人の納税地を所轄する税務署長に対し行うこととなっています。したがって、納税管理人の住所地を所轄する税務署長に対し行うことはできません。
国内に住所及び居所を有しないこととなった者の納税地については、次の順番で判断します。(1) 国内において行う事業に係る事務所等を有する場合
その事務所等の所在地(2) (1)以外の者で、その納税地とされていた住所又は居所にその者の親族等が引き続き、又はその者に代わって居住している場合
その納税地とされていた住所又は居所(3) (1)及び(2)以外の場合で、国内にある不動産の貸付け等の対価を受ける場合
その貸付けの対価に係る資産の所在地(その資産が二つ以上ある場合には、主たる資産の所在地)(4) (1)~(3)により納税地を定められていた者が、そのいずれにも該当しないこととなった場合
その該当しないこととなった時の直前において納税地であった場所(5) (1)~(4)以外で、その者が国に対し所得税の申告及び請求等の行為を行う場合
その者が選択した場所(6) (1)~(5)のいずれにも該当しない場合
麹町税務署の管轄区域内の場所
納税管理人の納税地はどこ??
ふむ。ちょっと整理してみようではありませんか。
日本国内に事務所がある場合
まず1つ目は、海外に住んでいるけど、日本に事務所がある場合ですね。
例えば、東京の新宿に事務所を構えているけど、本人は米国のニューヨークに居住しているケースです。
この場合、日本の事務所の住所を納税地とします。
事務所を所轄する「新宿税務署」に所得税を支払えばいいのです。納税管理人がね。
かつての納税地に親族が住んでいる場合
さて、日本国内に事務所がない場合はどうすればいいんでしょうか??
最初に確認すべきは、かつて住んでいた場所に親族が引き続き住んでいるかです。
その場合、かつての住所を納税地として、そこを所轄する税務署に所得税を納税します。納税管理人がね。
例えば、一家で新宿区に住んでいましたが、会社の都合で単身赴任、米国に移住した場合とかですね。
その場合、親族が住んでいる新宿区の住所を納税地とします。
そして、その納税地を所轄する「新宿税務署」に税金を払えばいいことになります。
不動産収入がある場合
さて、国内にも事務所はないし、かつて住んでいた居住地に親族も住んでいない場合はどうなるんでしょうか?
その場合、国内に不動産所得があるかチェックします。
不動産所得があるなら、物件の住所が納税地となります。
そして、納税地を所轄する税務署に所得税を払うのですね。
例えば、新宿でアパートを経営している大家さんが、突如、米国のニューヨークに移住したとしましょう。
すると、その不動産がある「新宿区の住所」を納税地として、そこを管轄する新宿税務署に所得税をおさめます。
かつての納税地
国内に事務所はないし、家族も引き続き住んでいないし、不動産収入もない方はどうすればいいんでしょうか?
そんな時は、前に住んでいた住所を納税地とし、そこを所轄する税務署に納税します。
例えば、新宿区にかつて住んでいましたが、英語習得のために米国のニューヨークに移住した方とかですね。
その場合、かつて住んでいた住所を納税地として、そこを所轄する「新宿税務署」に税金を納めます。
かつての納税地がない場合
国内に事務所がなくて、家族も引き続き住んでいなくて、不動産収入もなくて、かつての納税地がない場合もあり得ます。
えっと、これはおそらく、日本に一度も住んだことがない帰国子女とかになるんですかね。
あと、これまで納税していなかった学生がいきなり海外に移住して国内の源泉所得が生じるビジネスを始めた場合とかでしょうか。
その場合、自分で納税地を選んでいいようです。
新宿区でもいいですし港区でもいいですし葛飾区でもいいようです。
納税地を選びたくない人
国内に事務所はないし、かつての住所に親族は住んでいないし、不動産収入もないし、かつての納税地も存在しないし、自分で納税地を選びたくないときはどうすればいいんでしょうか?
そんなときは「麹町町税務署の管轄区域内の場所」を納税地として良いようです。
まあ、困ったら麹町に税金を納めてくださいというわけですね。
さあ、納税管理人の納税地を確認しよう!
以上、納税管理人の納税地の場合分けでした。
ぼくは国内に事務所がなく、引き続き親族が住んでおらず、不動産もないので、4つ目の「かつての納税地」に相当します。
それゆえ、納税管理人は、ぼくが住んでいた住所を管轄する税務署に、所得税を納めなければなりません。
このように、納税管理人を立てる場合は、納税管理人の住所は納税地に関係ないことに注意が必要です。
この性質から、納税管理人の住所と納税地がくそ遠くなる悲劇も起こり得るのです。
例えば、かつて北海道の小樽に住んでいたけど海外転出したので、納税地は小樽。
そして、納税管理人は沖縄の那覇に住んでいる場合だってあるわけです。
このように、
納税管理人住所 ≠ 納税地
になっているので、納税管理人を設定した方は納税地をチェックしましょう。
それでは!
Lin

おそらく、ブロガー。
今年でフリーランス 6年目。